●2005年5月17日 第14回MKCRセミナー

発表者:西島 孜哉 氏
      
関西文化研究センター長・武庫川女子大学文学部教授
       研究統括班代表
題目:関西人間文化形成のキーワード―モチベーション策定に向けて―

日時:2005年5月17日(火)17時~18時30分
会場:武庫川女子大学学術研究交流館 会議室
 
発表要約
関西人間文化形成のキーワード
―モチベーション策定に向けて―
西島 孜哉

 関西圏の人間文化のデータベースを作成する研究の一環として、江戸時代の前期の文学作品を題材に取り上げている。江戸時代初期は、関西圏の人間文化の形成にとっての大きなターニングポイントであった可能性は高い。特に元禄期といわれる文化の繚乱期に活躍した浮世草子作者井原西鶴、俳諧師松尾芭蕉、歌舞伎・浄瑠璃の近松門左衛門、狂歌師永田貞柳などの作品には文化形成のモチベーションの構成要素と、それにかかわるキーワードが見出せると考えている。

 西鶴に関しては中国大連におけるMKCR第1回国際学術交流フォーラムの研究発表で取り上げたが、「仕出し」というキーワードを通じて、新しいものを創造しようとする「創造性」を関西圏のモチベーション構成要素の一つとして確認している。また松尾芭蕉に関しては、兵庫地区大学懇談会の講演において、『奥の細道』の旅の目的やその中に詠まれた句の解釈、たとえば「夏草や兵共がゆめの跡」などを、「人間の営み」に心を寄せるという視点から試みることによって、おもいやり、やさしさなどの「人間尊重」の姿勢を関西圏のモチベーション構成要素の一つと考えている。さらにMKCRワークショップにおいて、西鶴の作品を例にとって、「世の鑑」などをキーワードに情報収集と伝達にかかわる「知の継承」に言及し、MKCR第1回国際シンポジウムにおいても「天下の台所」などをキーワードに、銀遣い経済圏としての自負、誇りなどを取り上げて、「帰属性」に言及した。

 そのようにいくつのキーワードを通じてモチベーションの策定に努めているが、ここでは西鶴の描く「江戸時代町人道」ということを題材に、西鶴が町人道の基本的な条件をどのように捉えていたのかを検討し、そこから人間文化形成のモチベーションの構成要素の一つを策定してみたい。

  江戸時代町人道の基本的条件

 『日本永代蔵』巻3の1「煎じやう常とはかはる問薬」は、四十歳くらいの男が、有徳者のところへ長者になるための方法を聞きに行くところから始まる。その男は自分に知恵才覚がないことを自覚していて、その知恵才覚によらないで「貧病のくるしみ」を治す方法を尋ねる。すると有徳者は、男が革足袋に雪踏をはいていることを賞した上で、次のような長者丸の処方を訓える。

△朝起五両、△家職二十両、△夜詰八両、△始末十両、△達者七両
この五十両を細かにして、胸算用、秤目の違ひなきやうに手合せ念を入れ、これを朝夕呑み込むからは、長者にならざるといふ事なし。

といい、必要な毒断ちを箇条書きにする。

○美食、淫乱、絹物を不断着 ○内儀を乗物全盛、娘に琴・歌賀留多 ○男子に万の打囃 ○鞠・揚弓・香会・連俳 ○座敷普請、茶の湯数奇 ○花見・舟遊び・日風呂入り ○夜歩行・博奕・碁・双六 ○町人の居合・兵法 ○物参詣・後生心 ○諸事の扱ひ、請判 ○新田の訴詔事、金山の仲間入 ○食酒・莨菪好き、心当てなしの京のぼり ○勧進相撲の銀本、奉加帳の肝入 ○家業の外の小細工、金の放し目貫 ○役者に見知られ、揚屋に近付き ○八より高い借銀

 この訓えをうけて、男は日本橋の南詰めに一日中立ちつくし、「とかく商売に一精力出し見ん」と、心を砕き、大工の仕事帰りに落とす木端をひろいあつめて、次第に分限になるという話である。大工の落とす木端を拾い集めるというのはひとつの知恵才覚なのであろうが、この話では知恵とはしないで、「可惜檜の木の切々落ちて捨るをかまはず」と始末心にかぞえているのであろう。とにかく、律儀さを象徴する「革足袋に雪踏」という西鶴の好んで用いる常套的な表現を通じて、始末な生き方を強調し、その延長に十万両の分限になる成功譚を描いているのである。

 さて表題の「常とはかはる」の意味するところは何か。従来これは薬袋に書かれた処方「煎じやう常のごとし」を「常とはかはる」とし、金持ちになる処方を提供したところが面白く、西鶴の奇想と考えられているようである。しかし、「常」とは違うというのは薬の処方を他のものに変えたというだけのことではなさそうである。一般には知恵才覚ということを金持ちになるための必要条件として、そのことについて処方するのであろう。しかし、有徳者は知恵才覚などには一切ふれない。この話の眼目はそのような知恵才覚をはじめから問題外にしているところにある。そのような一般とは違う、本当の処方箋ということなのではなかろうか。それに男は四十歳という年齢である。当時一般には四十五までに一生の身をかためるのが常であった。知恵才覚が個人の能力に頼るものであり、それは誰にでも可能なことではない。だからこの男はすでに四十歳であった。知恵才覚というものが限られた人々のものである以上、すべての人に可能なのは何か。知恵才覚によらない方法こそが多くの人々にとって重要なのである。まして世は商業資本主義の時代であり、資本がなければ成功はおぼつかない「銀が銀を設くる世の中」になっていた。個人の能力が発揮される可能性は極めて限定されていたのである。

 さてその処方をみると、実に着実である。家職が二十両と最も多いのは、目先の利害にとらわれずに、ただやりつけた家職に励めということであろう。これは誰にでも可能なことである。同時に代々の家職にはそれだけの知恵が積み重ねられているのだから、個人の思いつきを超えた重みがあるというのではなかろうか。その家職に励む方法は、朝起き、夜詰めであり、同時に達者であれという。そのようにして一生懸命働きながら、日々始末することが大切だといっているのである。何か消極的な、面白くない生き方のようにみえる。列挙された毒断ちの項目のなかには、現在からみればレジャーや教養とでもいうような生活のゆとりのようなものまで含まれているのである。はたして西鶴のいう長者丸の処方と毒断ちは理不尽なのであろうか。そのような家職重視、始末で着実といえそうな生きざまがともすれば忘れられ、一攫千金が夢みられる。西鶴はそのような「常」の世の人心を批判して「常とはかはる」着実さを主張しなければならなかったのであろう。

  律儀と仁義

 巻3の1は江戸の話であった。西鶴は江戸的な生き方として、それが常でなく、上方と違うとして描いたのではない。上方も江戸も町人道には変わりがないと考えていたのであろう。『永代蔵』の巻頭の章「初午は乗つて来る仕合せ」は上方の話だが、その冒頭部分は基本的には長者丸の処方に似ている。

〔大名などの特別の人は別にして、常の人である我々は〕、
一生一大事身を過ぐる業・・・・始末大明神の御託宣にまかせ、金銀を溜むべし。
〔金銀は、二親の外に命の親であり、残して子孫のためになる。世にある程の願いは、何によらず銀徳にて叶うもので、叶わざる事は天が下に五つだけだ。だから、〕
見ぬ島の鬼の持ちし隠れ笠・かくれ蓑も、暴雨の役に立たねば、手遠きねがひを捨てて、近道にそれぞれの家職をはげむべし。福徳はその身の堅固にあり。朝夕油断する事なかれ。殊更、世の仁義を本として、神仏をまつるべし。これ、和国の風俗なり。

 この序文相当部分には、やはり始末、家職、堅固、朝夕油断、〔仁義〕の語句が見える。仁義を加えているが、他は長者丸の処方と変わらないのである。やはり知恵才覚は問題にされていない。なかでも肝心なのは「手遠きねがひを捨てて」というところであろう。着実に家職に励めと訓えているのである。

 続けて、二月初午の日に泉州の水間寺に詣でる人々の話となる。人々がそれぞれに分際相応に富めることを祈誓するが、ご本尊は、

今この娑婆に摑みどりはなし。我頼むまでもなく、土民は汝にそなはる、夫は田打ちて婦は機織りて、朝暮そのいとなみすべし。一切の人、このごとく

と戸帳越しに告げるが、諸人の耳にはいらないのである。「いとなみ」は家職であり、地道に励めと訓えている。

 ここまでは長者丸の処方とまったく同じであったが、この話の眼目は、仁義が加わっていることである。水間寺には「おのおの五銭、三銭、十銭」を借りて来年倍にして返すという借銀の風習があった。年のころ二十三四の風俗律儀な男が、一貫の銭を借りていった。寺僧達は、この銭は返納されることはなかろう、これからは多額の銭は貸さないでおこうと噂しあったのである。ところがこの男は、江戸の船問屋で、掛硯に「仕合丸」と書いて、水間寺の借銭を入れておいて、漁師の出船に百文ずつ貸した。自然の福ありと、毎年集まり、十三年目に銭八千百九十二貫となった。それを通し馬で東海道を運んで返納したのである。寺では「末の世のかたり句」と宝塔を建立したのであった。

 長者丸を訓えられたのも律儀な男であったが、ここでの主人公も律儀な男であった。その男が世の仁義にしたがって、すなわち正直に、借銭を返納したというのが巻頭章のテーマであろう。律儀さを強調し、その生き方は必然的に正直を伴うもので「和国の風俗」だとしているのである。町人にとって最も重要なのが、この男のような生き方であると宣言したことになる。

 律儀と正直がセットになっていることに注意しなければならない。知恵才覚では正直はセットにならないようである。たとえば『永代蔵』巻4の4「茶の十徳も一度に皆」の場合がそれである。主人公小橋の利助は才覚男で、くくり袴に烏帽子を被き、「えびすの朝茶」を売って元手をでかす。葉茶見世を手広く大問屋になるが、道ならぬ悪心をおこして、茶の煮辛を呑茶に混ぜるという悪徳をおこない、結局乱人となってしまうのである。

  作品中の基本的キーワード

 西鶴の浮世草子で律儀の用例は49例ある。

身を捨恋にあきはて明けくれ律儀かまへ勤けるほどに(五人女1の2)
何事かと心元なし。律儀千万なる顔つきして(一代女1の3)
其律儀さ後生大事とかまへて(諸艶大鑑2の3)
年ひさしく律儀に役儀をつとめ、夕風に火用心を(盛衰記3の3)
唐土人は律儀に云約束のたがはず、絹物に奥口(永代蔵4の2)

 どれもほぼ似たようなもので、まじめで融通がきかない人物として描かれる。馬鹿正直というような意味合いが強いのである。少し揶揄するような使い方が見受けられるが、その人物のあり方を否定してしまうのではなさそうである。一つの典型的な人物像としているようにみえる。そのような典型を町人道の基本的な条件に取り上げているところに、西鶴の現実への鋭い眼があるといえそうである。

 正直についても同様である。用例は42例ある。

相生よく仕合よく夫は正直のかうべをかたふけ(五人女2の4)
はるばる正直にくだる心ざし、咄しの種に(諸国ばなし5の7)
渡世を大事に、正直の頭をわらして、暫時も只居(永代蔵4の1)
是町人の鑑ぞかし。殊更正直を本としてすゑすゑ目出度は(織留2の2)

 律儀同様に典型的な生き方としているようである。娯楽的で慰み草である浮世草子にとっておもしろさという点からすると、なかなか主人公にはなりえない人物像である。彼らの生き方は、波乱万丈ではいないが、地道にそれなりの人生を全うしている。西鶴はそんな人物像に注目しているのである。『永代蔵』の巻頭章の主人公が律儀で正直な男であったことは、その端的なあらわれであったと思う。

 始末、堅固、家職はどうであろう。

 始末の用例は83例と多い。好色物から町人物などすべての作品に見られる。

此世悴、親にまさりて、始末を第一にして(永代蔵1の2)
正月の着物もせず、年中始末に身をかため、慰には観世紙縷を(永代蔵2の2)
総じて人の始末は、正月の事なり。まだ堪忍の(永代蔵4の5)
あそび事にも始末第一、気のつまるせんさく也(胸算用2の1)
是をおもへば、万事に始末すべし。銀子を借て、利銀(織留2の1)

 なかでも『永代蔵』17例、『世間胸算用』9例、『織留』7例と町人物といわれる作品に多くみられる。好色物では「始末過ぎて見苦し」(椀久一世2の3)などと用いられる例もみられるが、それらの大半は肯定的に用いられているのである。

 堅固35例(達者の13例を含める)にも同様の傾向が見られる。

正直の頭をよごし、身をけんごにはたらき、世わたりにわたくしなく(新可笑記2の1)
第一、人間堅固なるが、身を過る元なり。(永代蔵2の1)
一切の人間、無事堅固になくては、世に住る甲斐は(織留4の2)
鬼のごとく達者になし給ひ、此手柄かくれなし(永代蔵6の3)

 家職についての用例は少ないが、17例みられる。

昔見し人、其家職かはらず、此前、日用取は其姿(永代蔵4の3)
うき世なれば、定まりし家職に油断なく(胸算用3の4)
総じて親より仕つづきたる家職のほかに、商売を替て(胸算用5の2)

 家職は替えないほうがよく、たとえ分散にあってもまた再び同じ家職をするものだといっているのは特徴的である。家職が家代々の仕つづけたものであり、個人的なものではないことを強調しているのであろう。

  もう一方の付随的キーワード

 西鶴の浮世草子には、「仕出し」の語は139例あった。また「知恵」は84例、「才覚」は121例、「利発」も66例見られる。この用例数からすると、律儀や正直などの着実なあり方よりも、新しい創造性が重んじられているかのように見える。しかし、仕出しや知恵才覚などの用例を吟味すると、それは家職にかかわって発揮されているのである。

 『永代蔵』巻1の3「昔は掛算今は当座銀」の主人公三井九郎衛門(実際は八郎右衛門)についてみてみる。延宝期の江戸の商業経済状況は武家財政の行き詰まりから、従来の掛売りの商法では営業が成り立たなくなっていた。西鶴はその状況を的確に描き、三井の「万現銀売りに掛値なし」の新商法を紹介する。諸種の織物の分担・分業制、切売り自由、即座の仕立など、呉服のデパートといえるような商法によって、

家栄え、毎日金子百五十両づつ、ならしに商売しけるとなり。世の重宝これぞかし。この亭主を見るに、目鼻手足あつて外に人にかはつた所もなく、家職にかはつてかしこし。大商人の手本なるべし。

となるのである。三井九郎衛門の成功は、知恵才覚によるものなのであるが、それは家職の延長上にあった。

 それは『永代蔵』巻4の1「祈る印の神の折敷」においても同様である。桔梗屋という染物屋の夫婦は「渡世を大事に正直の頭をわらして、暫時も只居せずかせげども」一向に埒があかない。そこで貧乏神を祭ったところ、「柳はみどり花は紅」のお告げをうけ、それより「明暮れ工夫を仕出し、蘇枋木の下染、その上を酢にてむしかへし、本紅の色にかはらぬ事を思ひ付き」となるのである。ここでも染物屋という家職のなかでの仕出しであった。ました桔梗屋の夫婦は正直で、暫時も只居しない働き者であったのである。

 西鶴が単なる思い付きの知恵才覚を重視していないのは明白であろう。

 『永代蔵』は巻4までが初稿であったと考えられる。それぞれの巻頭章の主人公は、西鶴が全体の基本的なトーンを考えて配置していると思う。巻1の1には律儀な江戸の船問屋、巻2の1にはこれも実直な藤屋市兵衛、巻3の1は長者丸を訓えられた律儀な四十男、巻4の1にはやはり実直な桔梗屋夫婦が取り上げられていたのである。それぞれ成功譚であるが、知恵才覚を教訓する話ではなかった。律儀と正直の話しであった。それこそが西鶴の最もいいたかったことではなかろうか。限られたエリートのみを対象とせず、普遍的な町人道をめざす、それが西鶴の描いた上方の人間文化であった。

 以上、律儀や正直と知恵や才覚などの用例をみてきた。西鶴の長者丸の処方や巻頭章に強調された語句は、町人道を示すキーワードであったと思う。そこから人間文化形成のモチベーションの構成要素として、最も基本的な地道とか着実性といったものが策定できると考える。もちろん知恵や才覚も町人道のキーワードであるには違いない。そこからはモチベーションの構成要素の一つとして創造性が策定しうるが、着実性と同じに論じることはできない。いわば基本的条件に対して付随的条件とでも位置づけるべきであろうか。

  関西圏の人間文化データベースの試案

 今回のセミナーにおいては、「町人道」をキーワードにして、「着実性」を人間文化形成のモチベーションの構成要素の一つとして策定したのであったが、これは単に一例を示したものである。2004年度のMKCRプロジェクト「関西圏の人間文化についての総合的研究」において、多くの研究発表がなされている。それらの研究成果(途中経過を含む)からはいくつかのキーワードを設定し、モチベーションの構成要素を策定することが可能であると思う。本日のセミナーはその手順を提案して、2004年度のプロジェクトメンバーの研究成果を「関西圏の人間文化データベース」の中に位置づけることを提案しようとするものである。次に示すものはデータベースの素案である。
 
〔表1〕関西圏の人間文化マップ
  属性
構成要素 思想・文化 言語・コミュニケーション 文学・芸能 世相・風俗 生活様式・習慣
モチベーション キーワード
What/Why

何を/なぜ大切にするか

人間尊重 歌枕
いたづら
       
帰属性 天下の台所
生国
日華新報
 コミュニケーション 畿内
俳諧活動
  喫茶文化
規律性 義理・人情        
社交性 挨拶・もてなし コミュニケーション   コミュニケーション  
How

どのような生き方をするか

誠実性        
着実性 町人道        
知の継承 世の鑑 往来物   社会資本
子育て
メディア
 
What/How

何を/どのように創り出すか

創造性 仕出し     ファッション
起業精神
街づくり
日本酒
伝承料理
京ブランド
起業精神
素人性 文化サロン   文化サロン
贔屓
   
玄人性 洗練・こだわり だみ声 上方浮世絵
雅び
  京町家
What/How

何を/どのように求めるか

現実重視 浮世       溜池
精神性 虚空間   自然描写
白砂青松
  京町家
風水思想
住空間
向上心・競争心 天下一
対東京
        
What/How

何を/どのように受けつぐか

伝統文化融合 パロディー
神官家
論語  古典享受  
地域文化融合 珍奇 古地名 ファッション 粉文化
国際性

華僑
朝鮮通信使
世界

漢詩文
外来語
平安女流文学    

 このベータベースを「関西圏の人間文化マップ」として、たとえばキーワード「天下の台所」「町人道」をクリックすると、以下のような簡潔な説明が示されることになる。その中に下線のあるいくつかのキーワード(下位分類)をクリックすると右に解説がでるということになる。

天下の台所
江戸時代の関西は広大な銀遣い経済圏を背景にして自信に満ちた盛んな経済活動を展開していた。大阪中之島周辺には数多くの蔵屋敷が立ち並び、西回り航路を利用して全国から米をはじめとする物産が搬入されていた。天下の台所というにふさわしい活況を呈していた。井原西鶴『日本永代蔵』(巻1の3)には、その経済的活動の情景が日本で初めて見事に描かれている。自信に満ちた経済活動は関西の人々に誇りを与え、大きな自負心を抱かせるものであった。『西鶴諸国ばなし』などの諸国ばなしの流行は、天下の台所を支える諸国への限りない興味・好奇心の表われであった。

銀遣い・蔵屋敷・西回り航路・井原西鶴・『日本永代蔵』・『西鶴諸国ばなし』

西島孜哉「銀遣い経済圏の広がり-江戸時代から関西圏をとらえる-」(MKCR第1回国際シンポジウム基調講演: 2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール)

町人道
江戸時代の町人道は「朝起5両、家職20両、夜詰8両、始末10両、達者7両」に象徴されるような始末な着実な生き方をする律儀さを根本理念としていたといえる。西鶴の『日本永代蔵』巻1から巻4までの巻頭章には、そのような律儀で正直な男が主人公となっていた。その主人公たちはどこにでもいる常の人で、知恵や才覚には乏しいが、日々健康で家職に精励していた。世の人心は知恵や才覚を働かせて致富をなしとげた立身出世譚を好み、一攫千金を夢見るものである。しかし西鶴が描いた町人道は、誰にでも可能な着実なものであった。ともすれば馬鹿正直と揶揄されそうな正直さをモットーとした律儀な生き方であった。

家職・始末・律儀・正直・常の人・致富

西島孜哉「関西人間文化形成のキーワード-モチベーション策定に向けて-」(MKCRセミナー:2005年5月17日:武庫川女子大学IR館201セミナー室)

 2004年度のプロジェクトメンバーによる研究成果を恣意的にではあるがベータベースの中にキーワードとともに位置づけている。以下にそれを図示しておく。このデータベース作成作業に協力をお願いしたい。

思想・文化
モチベーション 講演・研究発表課題 キーワード
What/Why

何を/なぜ大切にするか

人間尊重 兵庫地区大学月曜懇談会講演:西島孜哉
2005年2月21日:武庫川女子大学甲子園会館西ホール
『奥の細道』と近世人間文化-芭蕉は辺境の旅に何を求めたのか-

MKCR公開講座(予定):西島孜哉
壮絶な女の生きざまにみる愛-流れをたてても心は濁りはしない-
(「忍扇の長歌」、『五人女』、『一代女』など)
歌枕

いたずら

帰属性 MKCR第1回国際シンポジウム基調講演:西島孜哉
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
銀遣い経済圏の広がり-江戸時代から関西圏をとらえる-
MKCR公開講座(予定):西島孜哉
生国なつかしく候-人々のよりどころ-
(『万の文反古』1の3、4の3。『武家義理』6の1、6の3)
MKCRセミナー:柴田清継
2004年10月14日:武庫川女子大学C-708教室
神戸発行『日華新報』の基礎的考察-明治大正期の日中両国新聞-
天下の台所

生国

日華新報

規律性 MKCR公開講座(予定):西島孜哉
義理と人情のはざま-貶められた義理の意義-
(女同士、義理。近松『天の網島』など)
義理・人情
社交性 MKCR公開講座(予定):西島孜哉
コミュニケーションの諸相-亭主と客の挨拶と対応-
(発句、脇。芭蕉『奥の細道』、西鶴『置土産』など)
挨拶・もてなし
How

どのような生き方をするか

誠実性
(『武家義理』1の1)
着実性 MKCRセミナー:西島孜哉
2005年5月17日:武庫川女子大学IR館201セミナー室
江戸時代町人道の基本的条件-律儀・正直か知恵・才覚か-
町人道
知の継承 MKCRワークショップ:西島孜哉
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
江戸時代の情報収集と伝達-西鶴作品に具体相を探る-
世の鑑
What/How

何を/どのように創り出すか

創造性 MKCR第1回国際学術フォーラム:西島孜哉・羽生紀子
2005年3月7日:中国大連理工大学 
西鶴の創造世界-「仕出し」をキーワードに-
仕出し
素人性 MKCR公開講座(予定):西島孜哉
浮世草子の挿絵と上方浮世絵-師宣・西鶴と歌麿・流光斎-
(贔屓、サロン。西鶴・師宣『好色一代男』江戸版など。)
文化サロン
玄人性 MKCR公開講座(予定):西島孜哉
本当の美とは何か-姿絵から美人絵・役者絵-
(女絵、浮世絵、髪型。『好色一代男』『好色一代女』など)
洗練・こだわり
What/How

何を/どのように求めるか

現実重視 大阪府立大学上方文化研究所講演(予定):西島孜哉
2005年10月15日:大阪府立大学
桃源郷の行方-竜宮や隠れ里へ行った男たち-
浮世
精神性 武庫川女子大学学術研究交流館開館記念フォーラム:西島孜哉
2005年5月7日:武庫川女子大学IR館1階大会議室
西鶴にみる虚の空間構成について-宇宙融合・自然融合の思想-
虚空間
向上心・競争心 MKCRセミナー:ジェフリー・ヘインズ
2004年6月21日:武庫川女子大学C-708教室
Osaka versus Tokyo
MKCR公開講座(予定):西島孜哉
大矢数から浮世草子へ-天下一争いの流行と終焉-
(大矢数、天下一)
対東京

天下一

What/How

何を/どのように受けつぐか

伝統文化融合 MKCRフォーラム:管宗次
2005年2月19日:武庫川女子大学E-201教室
関西の都市文化-大山崎の文雅とネットワークの形成-
MKCRフォーラム(予定):西島孜哉
パロディー文学の本質-箔の小袖に縄帯-
(近松『出世景清』。『一代男。『犬百人一首』。貞柳『家つと』)
神官家

パロディー

地域文化融合 MKCR第2回国際学術フォーラム(予定):西島孜哉
長崎への手紙-珍奇さへの願望-
(珍奇、不思議。西鶴『諸国ばなし』『万文反古』など)
珍奇
国際性 MKCRセミナー:蒋海波
2004年11月11日:武庫川女子大学C-708教室
大阪華僑張友深に関する基礎的研究
MKCR公開講座(予定):西島孜哉
西鶴の世界観-女護島と纐纈城-
MKCR国際シンポジウム:崔博光
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
前近代における韓国人が見た関西
華僑

世界

朝鮮通信使

言語・コミュニケーション
モチベーション 講演・研究発表課題 キーワード
What/Why

何を/なぜ大切にするか

人間尊重    
帰属性 MKCR国際シンポジウム:乾善彦
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
言語コミュニケーションからみた関西圏
コミュニケーション
規律性    
社交性 MKCRワークショップ:佐竹秀雄
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
上方流コミュニケーションの分析
MKCRフォーラム:荻田清・彭飛・藤本憲一
2004年11月13日:武庫川女子大学LⅡ-11教室
関西ことばと文化-関西流コミュニケーションの世界-
コミュニケーション
How

どのような生き方をするか

誠実性    
着実性    
知の継承 MKCRワークショップ:郡千寿子
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
弘前市立図書館所蔵の『往来物』について
往来物
What/How

何を/どのように創り出すか

創造性
素人性
玄人性 MKCRワークショップ:藤本憲一
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
だみ声およびプレゼンテーションの音声・映像データベース構築
だみ声
What/How

何を/どのように求めるか

現実重視    
精神性    
向上心・競争心    
What/How

何を/どのように受けつぐか

伝統文化融合 MKCR第1回国際学術フォーラム:西崎亨 
2005年3月7日:中国大連理工大学
大陸文化の摂取-『論語』の受容を例に-
論語
地域文化融合 MKCRワークショップ:姜鐘植
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
古地名に用いられる漢字韻尾の様相
古地名
国際性 MKCR第1回国際学術フォーラム:杜鳳剛 
2005年3月7日:中国大連理工大学
和歌の中国語翻訳-森文庫所蔵『華倭合珠百人一首』を読む-
MKCR国際シンポジウム:杜鳳剛
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
日本語として作られた漢詩-『新撰万葉集』下巻の詩をどう読むべきか
MKCRワークショップ:佐藤勝之
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
授業における外来語の使用状況
漢詩文

外来語

文学・芸能
モチベーション 講演・研究発表課題 キーワード
What/Why

何を/なぜ大切にするか

人間尊重    
帰属性 MKCRセミナー:森田雅也
2004年12月9日:武庫川女子大学C-708教室
江戸時代における関西の海川交通と俳諧活動
MKCRフォーラム:広瀬唯二・徳原茂実・増田繁夫
2005年1月29日:武庫川女子大学E-201教室
平安京の内と外-西国とのボーダーライン-
MKCR国際シンポジウム:徳原茂実
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
古代の畿内・畿外
俳諧活動

畿内

規律性    
社交性    
How

どのような生き方をするか

誠実性    
着実性    
知の継承    
What/How

何を/どのように創り出すか

創造性    
素人性 MKCRセミナー:羽生紀子
2004年11月30日:武庫川女子大学C-708教室
上方浮世絵の周辺
MKCR国際シンポジウム:Andrew Gerstle
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
上方歌舞伎-役者と都市文化-
文化サロン

贔屓

玄人性 MKCR国際シンポジウム:Peter Ujlaki
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
上方絵の魅力
MKCRセミナー:西山明美・徳原茂実
2005年2月15日:武庫川女子大学C-708教室
元永本『古今和歌集』の雅びの世界
上方浮世絵

雅び

What/How

何を/どのように求めるか

現実重視    
精神性 MKCRセミナー:増田繁夫
2004年12月21日:武庫川女子大学C-708教室
白砂・海浜の風景
MKCRワークショップ:水谷隆
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
古典文学に描かれた自然の景物につい
白砂青松

自然描写

向上心・競争心    
What/How

何を/どのように受けつぐか

伝統文化融合 MKCR国際シンポジウム:Judit Arokay
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
平安時代女流文学:理想化と抑圧の狭間
古典享受
地域文化融合    
国際性 MKCR第1回国際学術フォーラム:増田繁夫 
2005年3月7日:中国大連理工大学
中国文学の平安女流文学への影響
平安女流文学

世相・風俗
モチベーション 講演・研究発表課題 キーワード
What/Why

何を/なぜ大切にするか

人間尊重    
帰属性    
規律性    
社交性 MKCRセミナー:信時哲郎
2004年9月28日:武庫川女子大学C-708教室
神戸喫茶店学に向けて
MKCR国際シンポジウム:信時哲郎
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
喫茶店と大関西圏
コミュニケーション
How

どのような生き方をするか

誠実性    
着実性    
知の継承 MKCRセミナー:Sunng Lai Boo、前田美也子
2005年2月3日:武庫川女子大学C-708教室
福祉コミュニティ形成と社会資本の要素としての伝統文化行事
MKCRフォーラム:中谷彪・本玉元・西本望
2004年12月11日:武庫川女子大学E-201教室
関西子育て事情-関西流子育ての「ルーツ」と「いま」を探る-
MKCR第1回国際学術フォーラム:中谷彪・本玉元
2005年3月7日:中国大連理工大学
子育ての普遍性と固有性-日本・欧米・中国の子育て-
MKCRワークショップ:芝田正夫
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
関西のメディア研究の資料について
社会資本

子育て

メディア

What/How

何を/どのように創り出すか

創造性 MKCRワークショップ:横川公子
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
NDC(日本デザイナーズクラブ)の資料発掘とその整理経過から
MKCRセミナー:安藤明人
2005年3月3日:武庫川女子大学C-708教室
女子大生の職業意識と起業家精神
MKCRワークショップ:たつみ都志
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
これからの阪神間の街づくり
ファッション

起業精神

街づくり

素人性      
玄人性    
What/How

何を/どのように求めるか

現実重視    
精神性    
向上心・競争心    
What/How

何を/どのように受けつぐか

伝統文化融合    
地域文化融合 MKCRセミナー:井上雅人
2004年7月26日:武庫川女子大学C-708教室
関西ファッション史の形成にむけて
ファッション
国際性    

生活様式・習慣
モチベーション 講演・研究発表課題 キーワード
What/Why

何を/なぜ大切にするか

人間尊重    
帰属性 MKCRワークショップ:寺本益英
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
京都を中心とした喫茶文化の展開と製茶技術の発展
喫茶文化
規律性    
社交性    
How

どのような生き方をするか

誠実性    
着実性    
知の継承    
What/How

何を/どのように創り出すか

創造性 MKCR第1回国際学術フォーラム:大杉匡弘・松井徳光
2005年3月7日:中国大連理工大学
関西で育ち生まれた日本酒
MKCRフォーラム:鷲尾圭司・島田武司他
2004年10月24日:武庫川女子大学MM館723号教室
関西食文化-伝承と創造の食ビジネス-
MKCRワークショップ:土井裕司
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
うどんの今と京ブランドの立ち上げ
MKCRワークショップ:河野武平
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
食文化から生まれてくる産業構造
日本酒

伝承料理

京ブランド

起業精神

素人性    
玄人性 MKCR国際シンポジウム:大場修
2005年3月23日:武庫川女子大学MM館メディアホール
関西の町家と京町家
京町家
What/How

何を/どのように求めるか

現実重視 MKCRワークショップ:丸山健夫・河地利彦
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
関西と関東の自然環境-情報エントロピーからみた降雨比較-
溜池
精神性 MKCRセミナー:大谷孝彦
2005年1月20日:武庫川女子大学C-708教室
京都の町家に関して
MKCRセミナー:天畠秀秋
2004年10月19日:武庫川女子大学C-708教室
京都とソウル-風水思想と歴史的都市の囲繞空間-
MKCRワークショップ:天畠秀秋
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
京都を中心とした歴史的空間構成の特性
MKCRワークショップ:梁瀬度子
2005年3月22日:武庫川女子大学C-802教室
畳文化の歴史的背景と現代住宅における畳空間の特性
京町家

風水思想

住空間

向上心・競争心    
What/How

何を/どのように受けつぐか

伝統文化融合    
地域文化融合 MKCR第1回国際学術フォーラム:高橋享子
2005年3月7日:中国大連理工大学
関西の粉文化
粉文化
国際性    


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